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裁判長!ここは懲役4年でどうすか [スリル/サスペンス]


裁判長!ここは懲役4年でどうすか 1 (BUNCH COMICS)

裁判長!ここは懲役4年でどうすか 1 (BUNCH COMICS)

  • 作者: 北尾 トロ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2007/12/08
  • メディア: コミック


これがリアルなんだ

裁判所―そこでは「犯罪」を巡った様々な裁判が日々行われている。
そして裁判の数だけの人間ドラマが語られるのだ…
原作者・北尾トロさんが傍聴した裁判の模様を語ったエッセイ。
それを同名でコミカライズしたのが、今回ご紹介するコミックです。
「裁判員制度」という言葉が世間の話題にのぼるようになってきた
2006年あたりから、「傍聴ブーム」という言葉が世間を賑わせたのは
まだ記憶に新しいところです。
この漫画はそのブームの火付け役である北尾さんの同名小説を下敷きに
コミカライズした松橋犬輔さん自身が傍聴したドラマを加えて3年間、
単行本にして13巻で雑誌の廃刊と共に一旦完結した漫画になります。
「これが本当に現実の人間の所業なのか!?」
と思わせる驚きのドラマがてんこ盛りです!

週刊コミックバンチで連載。
この本に出逢ったのは2年ほど前でしょうか。
法廷での相手のウソや矛盾を指摘して真実を暴き出す
ニンテンドーDSの法廷バトルアドベンチャー「逆転裁判」が好評を博して
着々とシリーズを重ねていた折も折。「ここは懲役4年でどうすか」という
妙に軽い感じのキャッチーなタイトルに惹かれて読み始め、そのままハマってしまいました。

主人公は北尾太郎という28歳・業務用エアコンの営業マン。
偶然霞ヶ関にある裁判所のエアコンメンテナンスに訪れた際に
興味に駆られて覗いた裁判に衝撃を受け、以後「傍聴仲間」と呼ぶべき
個性豊かな先輩傍聴人達と出会いながら、様々な裁判を傍聴していくというもの。
一応「主人公」とは言うものの、基本彼は傍聴しながらその裁判の登場人物たちに
心の中で肩入れしたり、激しく憤ったり、時には涙を流したり…いわゆる私達読者と同じ
「観覧者」でしかなく、その裁判に「ちょっと待ったー!!」と割って入るようなことはありません。
むしろその物語の主役はその事件の当事者達―つまり被告人と原告、そして彼らに関わる
弁護士、検事、裁判官達になるのです。

ありきたりな物言いになりますが、この漫画の魅力は「裁判」という被告人が
自身の今後の重大な分岐点に立たされた時に垣間見える「その人の剥き出しの本性」
というべきものが毎回描かれ、その度に
「こんな考え方をする人、現実にいるんだ!」という驚きを提供してくれるところです。

裁判といえば人間同士の愛憎の果てに起きるものや、かと思えば呆気ないくらい
あっさりと行われる究極のドラマである「殺人事件」をはじめ、
衝動的ないわゆる「出来心」からくるものや歪んだ性癖に衝き動かされ、
もはや回復は困難なのではないかと思われものまで一つ一つが超個性的な
「強制わいせつ・強姦」の案件であるとか、
第三者が立ち入ることが憚られるほどに被害者と加害者が強い信頼の上で
至ってしまった涙無しには聞けない「自殺幇助」など本当にバラエティに富んでいます。
そしてそれらに対して口述する被告人達の態度もその人らしさを反映して
涙ながらに反省の弁を述べ、後悔を口にする人もいれば、実はそれが裁判官の温情を狙った
打算の上に行われた演技だったり、かといえば反省の色すらなく最後まで
「何で自分が」と言わんばかりの態度をとり続け、被害者の家族達の怒りを煽る人、
何か悟ってしまったかのように晴れ晴れとした姿で、何の打算も無くひたすら正直に答えて
裁きを待つ人もいます。
それらを原作者の北尾さんと、漫画化された松橋さんが実にドラマチックに描いてくれるのです。

特に面白いのは被告が当初主張していた「事実」に対して、検事がその矛盾に切り込み
その人の真実の姿が暴かれる「どんでん返し」です。
最初は事件のあらましや被告の証言などから、犯罪に至るまでの物語が描かれ、
それに対して北尾らが「ああ、こういう事件なのかあ じゃあ被告にも同情の余地があるな」
みたいな感想を(私達も)もつのですが、一見何の矛盾も破綻も無く自然の流れで
やむを得ず至ったかに見える「事実」に別の情報を持ってきて
「あなたはそう主張するけど、本当は違うんじゃないの?ほら、ここに証拠もあるし」
と切り込むと一転、被告は黙りこくり、一連の物語は被告の異常性や
身勝手さを浮き彫りにしたものに「書き換わって」いくのです。
これが本当にドラマチック!
それまで感動物語とさえ思えたその話が、一転してコメディかと思えるほど
幼稚な動機によるものだと判ったり、逆に最初は単純なものかと思えたものが、
恐ろしく根深いものに変化したり…
ことに1巻後半から3巻の冒頭までを使って一つの事件が描かれる「言いなりロボット」
そして4巻のとある夫婦の深い愛の物語「純恋歌」などは、この作品は最終巻まで追おう!
と思わせるに足るインパクトを与えてくれました。

img558.jpg
事件のあらましを第三者目線から集めた情報から解説してくれる重厚な事件担当のシゲさんや、
えろい話大好き!でそんな裁判しか傍聴しないちょいとピンクなお話担当の鉄平君など
主人公の北尾太郎が霞むような個性的な傍聴仲間たちもいい味出してます。
一見軽い感じで喋りつつも、えぐりだすようなツッコミを入れてくる星川検事と
弁護士という全く逆の立場で被告を護る双子の妹。
頼り無さそうに見えてしたたかな演出をするベテラン弁護士。
厳しくも温情に満ちた言葉で、重罪を犯した被告人に心からの後悔の涙を流させる裁判長。
そして判決の行方を巡って彼らが駆け引きをしていく様は本当にどれもこれも面白いです。

もし未読な方がいらっしゃいましたら、是非ご一読を!


北尾トロさんのHP → 北尾トロ公式サイト
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コメント 2

madi

現役弁護士がよみとストレスフルなんですが、おもしろく読めているようですね。裁判傍聴マンガはほかにもでていますが、弁護士の苦労という点では麻生みこと作品をおすすめします。
by madi (2010-10-28 03:33) 

meriesan

おお、法曹界の方が…!なるほど、部外者がエンターテインメント的に見ると面白いのですけど、やはり現場で働いてらっしゃる方だとまた異なる感想を持つものなのですね。
麻生みことさんといえば恋愛漫画という感じがしてましたが、そんな漫画も描いてるんですね!今度読んでみますヽ(‘ ∇‘ )ノ
by meriesan (2010-10-28 04:01) 

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