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少女椿 [ファンタジー]


少女椿

少女椿

  • 作者: 丸尾 末広
  • 出版社/メーカー: 青林工芸舎
  • 発売日: 2003/10
  • メディア: コミック


せめて首だけ いずこへなりとこの世の外へ

人生相談―
私は12才の女の子です
三年前に父が家出をして母と二人でくらしておりましたが
母が死に 残された私は行くあてもなく
見世物小屋のおじさんの甘い言葉についだまされて小屋の芸人にされてしまいました。
毎日つらくて死んでしまおうかと思う事もあります。
そんなわけで今は学校も行ってません。
こんな事では将来が心配で夜も眠れません。
私はどのように生きたらよいでせう…

丸尾末広―
マンガ好きな方ならこのレトロな画風で、淫靡にして怪奇そして幻想的という
強烈な個性を持つ漫画家の名に必ずあたっていると思われます。
しかしその個性ゆえ、この方の作品を熱狂的に支持されるファンの方もいれば、
イラストは見かけたものの肌が合わず購入に至らない方もいらっしゃるはず。
そして私が後者でした。
この本を購入したのは全くの偶然。
たまに気が向いていつもと違う書店に立ち寄ってみると、
いつも自分が好んで読むマンガとは毛色の違うものに興味が惹かれるようで…
この禁断の匂いただよう丸尾さんの作品の中から、代表作とされている作品をご紹介します。

時代は大正か昭和の初期あたりでしょうか
父親は3年前に蒸発、病を得た母親は病床にて身動きできぬまま鼠に身を食われて死去。
赤貧のまま天涯孤独となった少女・みどりちゃんは、騙されて見世物小屋の芸人にされ
それからは知らない土地を転々としながら、貧乏な一座の芸人達の鬱憤のはけ口にされていました。
物語は薄幸のヒロインである みどりちゃんが、もうひたすら救われないお話です。
一座の芸人達の性的なものを含めたいじめや、折角巡ってきたチャンスを
次の瞬間には運命が無慈悲に引き裂くという…
それを丸尾末広さんの画風であるレトロで淫靡でおどろおどろしいタッチによって
みどりちゃんが置かれた異常な状況を共感させるような、それでいて
この少女はどうなってしまうんだろう?というハラハラ感を感じさせてくれます。

樋口ヒロユキさんという、これまた数奇な運命を辿るアニメ版にも関わった
ライターさんのお話によると、少女椿は元々「紙芝居」という下敷きがあるそうです。
薄幸の少女・みどりちゃんが様々な不幸に見舞われるというストーリーはそのままに、
丸尾さんらしい脚色を加えて創られたのが本作。
海外においてもその評価は高いのだそうです。

読んでいて感じるのは、とにかく息の詰まるような異形の数々。
みどりちゃんが働かされている見世物小屋の芸人達の姿や
その陰湿な性格もそうですし、新たに加わる人気の西洋マジックの使い手で
みどりちゃんの恋人になってくれるおっさん、ワンダー正光もまた、
強い独占欲と狂気にも似た高いプライドの持ち主で、
みどりちゃんに言い寄る団員をむごたらしく殺したり
客の罵声に苛立ってプライドを傷つけられると、キレて恐るべき奇術を披露したりします。
それでも頼るものとて無いみどりちゃんは彼にすがるほか無く、彼に刃向かいさえしなければ
自分を護ってくれる正光を受け入れます。
逃げ出したくても一人では生きていけず、自分の運命を翻弄されまくる彼女の薄幸ぶりに
なんとも切ない、というかやりきれない、というかああ無情と天を仰ぎたくなると言うか…

img569.jpg
そんな作品なものですから、少女に対する悲惨な虐待シーンや
一座の人々の描き方などに差別的表現が遠慮なく突っ込まれ、
ここで採りあげていながら微妙にお薦めしづらい作品なのですが(;´▽`A``
物語に惹き込ませたのは、丸尾さんの描く悪夢のような奇怪にねじくれた
その幻想的な世界観と、みどりちゃんの子供らしいキャラクターです。
いやなものはイヤ!と主張して逃げ回るところとか、いじめを受けてもたまにやり返したりとか
(その後にもっと陰湿な嫌がらせをされたりしますが)、
全てを粛々と受け入れるのではない彼女の子供らしい態度に救われもするし、
一方で彼女の泣き叫ぶ様が胸に突き刺さったりもするんです。
ラストなんかもう…!
明らかに負の後味が残る作品です。
でも、±を廃した心の振れ幅としては間違いなく心動かされる作品でもあります。


丸尾末広さんのHP → 丸尾地獄
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