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水域 [ファンタジー]


水域(上) (アフタヌーンKC)

水域(上) (アフタヌーンKC)

  • 作者: 漆原 友紀
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/01/21
  • メディア: コミック


…けど もしも わしらの子の魂がこの水の底にいるのなら
どうかその子だけはお守りください
泥水に埋もれぬよう…お守りください


突き刺すような日照りだった―
毎年猛暑猛暑というけれど、この夏はまだ雨の一滴も降ってはいなかった。
水源であるダムは干上がり、だから水泳部のハズの千波たちは
給水制限で水の無いプールを横目に、まるで陸にあげられた魚のようにあえぎながら
校庭を走るハメになっていた。
「…こんなことをするために水泳部入ったんじゃないのになあ~~」
半ばヤケになって走る千波。その時―不意に身体の 平衡が 崩  れ    た

(―あれ?)
頬にかかる雫で目が覚める。
しかしそこは、さっきまで自分が走っていた校庭ではなく、
傍で豊かな水流をたたえ、滔滔と流れるどこかの山間の河原だった。
空は厚く雲が垂れ込め、糸を引くようなか細い雨が、千波の全身をうっすらと湿らせる。
河原の向うの高台に、藁葺き屋根の古びた民家が点々と見えていた。
「誰…?」
不意に水の中から現れた少年に、声をかけられた千波は飛び上がった。
それは中学3年の自分よりもずっと年下に見える、
腕白そうだがどこか寂しげな雰囲気をたたえた少年だった―

月刊アフタヌーンで連載。全2巻。
同誌で以前連載し、アニメ化や実写映画化もされた「蟲師」の著者・漆原友紀さんの新作です。
漆原さんは深い緑―山や森など、古き日本の田舎の風景を幻想的に描き出す作風が特徴の
漫画家さんで、その土地で語られるおじいちゃんやおばあちゃん達から聴けるような
民話、伝承の類を作品に登場させるのが特徴の、私の大好きな作家さんの一人です。
上下巻同時発売となり、しかもA5判サイズでおまけのついた
「愛蔵版」まで同時に発売という熱の入れよう。
水の中を模してるようなザラっとした肌触りのカバー。
そして物語りも実に漆原さんらしく、私は仕事帰りで空腹を抱えながらも、
読み終えるまで本を置くことが出来ませんでした。

不意に気を失うときてしまう、雨が降り続き、近くに川が流れる とある山間の村。
実はその村は、かつて千波の母と祖母が生まれ育った村でした。
ヒロインの中学3年生の女子・千波は、そこで出会った土地の少年スミオと、
スミオが「父ちゃん」と呼ぶ、どう贔屓目に見ても老人の見た目をした竜巳と出会い、
他の村人は誰一人として見かけないこの村と、元の自分の見知った場所との間を
まるで夢と現のように往復するようになります。
そして千波は、この村でかつて母と祖母が土地を離れることになったとあるできごとを知り、
それに翻弄された母と祖母、そしてスミオと竜巳に起きた出来事を知っていくことになります。

もうとにかく物語全編を通して描かれ続ける、とある山間の田舎の美しい景色、
そして土間などがある家屋の中の素朴な様子がひたすら私の目を魅了します。
これは蟲師の時も少なからず山や森などの背景にびっくりさせられたのですが、
今回は蟲師ではあまり描かれなかった人里の家屋の様子が生活感たっぷりに描かれていて、
物語の雰囲気を盛り上げてくれるんですよね。
なんだろう…「写実的」というなら、それはきっと当てはまらないのだけれど、
鬱蒼と生い茂る豊かな自然や、先祖代々の土地を守る閉鎖的な村の「重厚さ」みたいなのが
抜群に上手いんですよね。薄っぺらい言葉ですが「雰囲気が良い」ともいえるかな。
あちこちに描き込まれるカケアミと、ざらっとした質感の荒目のトーンが良いんです。
中でも特筆すべきはキーワードにもなってる「水」ですね。
入ったら底無しで浮かび上がれなさそうな昏い水面、
陽光をキラキラ反射しながら、浅い水底が透けて見える澄んだ水、
滔滔と水を注ぎ続ける滝の水飛沫、泥を含んでざらついた重みのある水…
これほどまでに多彩な水を描き分けられるものなのかとびっくりします。(;´▽`A``

img763.jpg

お話も漆原さんの十八番である村の「伝承」を中心に置きつつ、
とある出来事に翻弄される千波ら家族の絆が描かれます。
蟲師が好きな方なら間違いなく楽しめると思います。
切なさを残してしっとりと終わるラストも好きですね。


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