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スピカ  羽海野チカ初期短編集 [ハートフル]


スピカ 〜羽海野チカ初期短編集〜 (花とゆめCOMICSスペシャル)

スピカ 〜羽海野チカ初期短編集〜 (花とゆめCOMICSスペシャル)

  • 作者: 羽海野チカ
  • 出版社/メーカー: 白泉社
  • 発売日: 2011/07/20
  • メディア: コミック


なにかを好きになるって そんなに悪いことなのかなあ 笑われるほど?

間もなく「3月のライオン」の最新巻が発売になる羽海野チカさんの、
出世作「ハチミツとクローバー」と同時期にあちこちで描かれていた作品を集めた小品。
ページ数は100ページ程度と、見かけたときの印象は「同人誌みたい」(;´▽`A``
初期作品集というと、やっぱりどうしても作画的に初期っぽい拙さが出るものですけど、
この作品集はハチクロ時代の絵柄ということで、それほど違和感がありませんでした。
確かに描き下ろしの今の絵が出てくると、むしろうわぁ~綺麗!ってなるんですけど、
昔は昔でそのお話にマッチした絵になっていて、羽海野ワールドとでも言うべき
物語に引っ張り込む雰囲気作りがやっぱり巧い作家さんなんだなあという印象。
それではご紹介してまいりましょう。

フルカラーの8ページ「冬のキリン」を含めた6本の物語を収録した作品集となっています。
この本で得た印税は全て東日本大震災への募金になるそうで、
羽海野さんにとっては純粋にメモリアル的な作品集になるのでしょうか。

まずご紹介したいのは、ハチクロ好きなら間違いのない作品といえる表題作でもある「スピカ」。
大好きなバレエを進学のために諦めなさいと母親に言われ思い悩む女の子が、
夏の大会でベスト4を目指して青春を全て練習に捧げて頑張る野球部員と出会う物語。
「漫画家」とか「画家」とか「俳優」とか「スポーツ選手」とか…
その裾野は広いけれど、食べていけるのはほんの一握りしか存在しない世界。
格別自分に才能が備わっているわけではないけれど、ずっと好きで好きで仕方ない
バレエに打ち込む自分に、「現実的な未来」が突きつけられる。
「もうバレエは趣味程度にして、将来の仕事のために勉強しなさい」

誰しもが好きを仕事にしたいと思う。
けれどそれを仕事にしている自分をリアルに想像できるわけもなく、
「バレエをこのまま続けても、食べていけるとは限らない」という親の言葉に反論できる材料もなく…
思えば、ここで「それでもやりたい!」と根拠は無くても言えるかどうかが、
それを仕事にできるかどうかの最初の試練なのだと思う。
もちろん親が納得するであろう「現実的な」妥協点としては
「ひとまず就職をして、どうしても夢を諦めきれないなら
それが仕事にできる実力が付いてから」やればよい、というところか。
勿論そういう人もいるにはいる。諦めなければ一旦遠回りしても自分の生活を安定させながら
いつかそういう機会を得ることもあるかもしれない。けど…
思い悩んで大好きなバレエにも影響が出てしまうヒロインの美園さんは、
そんな時高校3年間という貴重な青春時代を「野球」に捧げる野球部員と出会う。
彼らのやっているものこそ、その最たるものではないか…

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この作品はテーマ的にも、絵柄や演出的にも羽海野さんのメジャー作品と同じ方向性をもった作品で、
「これこれ、これが羽海野さん節だよ~」
とキュンキュンくるお話だと思います。
…思えば高校3年の時、自分が請求して家に届いた代々木アニメーション学院の資料を前に、
父親に「本気でやるつもりなのか」と言われたあの日、
自分が「やりたい」と言いきっていたらどうなっていたのか…
今頃後悔していただろうか?それとも変わらず好きでいられただろうか?
ifを考えても詮無いことだけれど、今正に人生の岐路に立とうとしている当時の自分に
今の自分が声をかけるとしたら、ぼんやりとした自分の夢を応援できるだろうか?
ああ~ えぐられるなあ。
それで美園ちゃん、めちゃ可愛いんですよ。
天然ドジっ子でヌけてるところもあるんだけど、でも自分の夢にひたむき。
危なっかしいんだけど応援したくなる女の子なんですよ。

img306.jpg

それから「ミドリの仔犬」「はなのゆりかご」の2編は、
ヨーロッパの田園のようなのどかな景色が広がるとある村(?)が舞台の
ちょっとファンタジックな物語。
どちらかといえば「はなのゆりかご」が昔懐かしいきちっとした小説のようなラストで後味がすごく良い。
偏屈なじいさんがふとしたきっかけで自分の心の脆さを露呈する姿が、
私にはご飯3杯コースでございますヽ(‘ ∇‘ )

6ページの「夕陽キャンディー」は、描いているだろうなとはぼんやり想像してはいましたが
私にとって物珍しかった羽海野さんのBL作品として、なんか「ああ、違和感なく馴染むな」
みたいな妙な感想をもったりしました。…特に作品に共感とかは無かったですけど。

そしてラストのスタジオジブリが発行する無料の小冊子に寄稿したという
「イノセンスを待ちながら」は、押井監督作品のパトレイバーthe Movieの思い出を、
特にあのもの言わぬ、しかしあの作品の雰囲気を決定付けている背景の数々と
南雲さんへの思い、そして同じ繋がりで攻殻機動隊のバトーに対しても
その強い思い入れを印象的なテキストとカットで語っています。
その表現力たるや 自分の書くマンガの感想がなぜこうも薄っぺらいのだとがっくりするほど
こちらによく伝わるんですよね。

img307.jpg

以上、印象的だったとこだけずらずらっと並べ立ててしまいましたが、
100ページ程度の初期作品集で、しかも500円くらいの価格でコレは、
もちろん全ての作品が感動感動!というわけではないですけど、
個人的にはコストパフォーマンスに優れた本だったと思います。
羽海野さんのファンの方ならまず損はしないと思いますよ。


羽海野チカさんのblog → 海の近くの遊園地
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コメント 2

madi

スピカは司法試験が競争率62倍のころの合格者なので、勉強中の焦燥感とかいろいろなところに共感しながら読むことができました。
by madi (2011-08-04 00:18) 

meriesan

司法試験も狭き門ですよね~(;´▽`A`` 報われるとは限らないけれど、自分を信じて頑張る姿は傍目にはかっこよく見えるのですが、本人は色々な葛藤があるのでしょうね…
by meriesan (2011-08-04 00:45) 

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