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シュトヘル [燃え]


シュトヘル1 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

シュトヘル1 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

  • 作者: 伊藤 悠
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2009/03/30
  • メディア: コミック


わたしの仲間の名前は…この文字が、憶えていてくれるのか。…ユルール。
―それが… …それが、文字なのか。


「おれのきれいごとが…きみを殺すのか」
おれはたまらず、その人が捕らえられた檻に取りすがった。
「ちがう―」
いくつものアザをつけられたボロボロの顔をあげ、
その人はむしろ晴れ晴れとした表情で夢見るように言った。
「―わたしを生き返らせてくれた。
 …私は、おまえの きれいごとのために生きようと思いかけてたんだ ユルール。」
そう言って微笑ったその人の顔を、おれは一生忘れないだろう。
仲間の仇を討つために殺し、いつしか悪霊(シュトヘル)と呼ばれた哀しき獣の、
それが最期の笑顔だった…

月刊!スピリッツにて連載。
まるで帝国時代の日本のような架空の世界を舞台にした
佐藤大輔さんの小説「皇国の守護者」をコミカライズしたことでも有名な伊藤悠さん。
今回ご紹介するのは、13世紀、蒙古(モンゴル)が西夏国(タングート)への侵攻を
進めていた時代を舞台に、西夏国の秘宝を蒙古から守るため、自身の部族を捨てた少年と、
蒙古軍に惨殺された仲間の無念を晴らすため、手を下した男を追い求めて
蒙古軍を殺しまくり、いつしか悪霊(シュトヘル)と呼ばれるようになった女との物語です。

私は著者の前作のコミック版「皇国の守護者」が好きだったんですが、
「諸事情により」これからというところで完結してしまい、非常に勿体無い思いをしていたんですが、
ひょんなことから伊藤悠さんの次回作の存在を知り、慌てて今回読んでみた次第です。
2009年連載開始って…今まで気付かなかったのもどうかセルフつっこみを盛大に入れつつ。

舞台はチンギス・ハーンが猛威を振るった13世紀の中国。
かつて蒙古軍に敗れ、屈辱の臣従を余儀なくされた部族の息子であるユルールは、
大方の男達が普通にそうするような争いを好まず、書物に親しむことを何よりも好む
年齢の割りに利発な少年。
戦で功を挙げる事がステータスで、それを好まないという点で部族の周りの者から
失望されている彼は、かつて西夏国からこの部族にやってきた、下男の老人・ボルドゥに
見込まれて、西夏への侵攻と共にその貴重な書物を悉く焼き捨てる蒙古軍から
西夏国の秘宝・「西夏文字の文字盤」を漢民族の国・「宋国」に持ち出す旅に向うことになります。
そこでユルール達は、蒙古に強烈な恨みを抱いてその仇を探している女戦士
シュトヘルに出会い、実は彼女の追い求める仇が、ユルールの異母兄であり、
ユルールを連れ戻そうと迫ってきていることを知るに至ってユルールと行動を共にするのです。

このお話で良かったのが、戦闘シーンの描写です。
物語としては侵攻する蒙古軍と、篭城してそれを迎え撃つ西夏国軍との攻防が描写され、
それぞれの服装や装備、攻城兵器は勿論の事、なにより神箭手(メルゲン)と呼ばれる
弓の名手のハラバルを筆頭にして、西夏軍に射掛けられる矢の嵐が凄まじい!
そしてそんな蒙古軍に同僚を殺され、復讐に燃えてひたすら殺すことに快感を感じる
シュトヘルが襲い来る蒙古の兵士たちなどを前に大立ち回りをする、
「一対多」もしくは「多対多」の殺陣の描写がいいんですよね。

img631.jpg
コマの見せ方も非常に巧くて、山のように描かれる死体によって
死と隣り合わせの時代であることを強調しつつ、そんな環境が当たり前のキャラクター達から出てくる
含蓄の有るセリフの数々がばしっ!とキメてくるんですよね。
あえて苦言を呈するならそれもここで、部族の中で戦場を嫌って参加してこなかった
作中でも言われてますが「お坊ちゃん」であるユルールが、身体を張ってシュトヘルに
復讐以外の生き方を提示しつづけるのですが、やっぱりちょっと背負うものが少ないので
説得力に欠けるというか… 最後の弓引くシーンはお坊ちゃんの精一杯をみた気がして
良かっただけに、それ以前の大人びたセリフは微妙に響かないのが残念かなあ。

作品には西夏国の特徴とされる「西夏文字」という独自の文字文化が
キーワードになっているのですが、ここの部分はこれから語られていくのかなと思います。
現在既刊3巻で、ようやくプロローグが終わったという感じなので、この先の展開に期待、です!


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