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北京的夏 [青春/自分探し]


北京的夏 (講談社BOX)

北京的夏 (講談社BOX)

  • 作者: 松本 剛
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2007/12/04
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


そして一週間後― 今年の6月4日
君はあの広場で歌を歌う 愛した人のために歌う
でも6月5日からは君はもう自分のために歌うんだ 夢と希望と未来を歌うんだ


1990年、夏―
日本の人気ロックバンドのドラマー・トオルは、
スランプから許可された旅先の北京で運命の女性と出会う。
彼女の名は「緑(リュイ)」
彼女が中国の裏路地で歌う「本物のロック」に、トオルは衝撃を受ける。
今なお人々に生々しい心の傷跡を残す6・4(リュウ・スウ)から間もなく1年―
トオルはこの北京、天安門広場で今再びロックの狼煙を挙げることを決意する…!

1992~93年にかけてミスターマガジン誌にて連載、
93年に単行本化され、2007年に講談社BOXレーベルでリメイク刊行された作品です。
原作者は90年代に大ヒットを飛ばしたロックバンド・爆風スランプのメンバー、ファンキー末吉さん。
その実体験をベースに作られた原作を、青春物語を多く手がけられている松本剛さんが
漫画化した作品になります。
今回のコミックは「阪大漫研Podcast」のパーソナリティ・ピエール手塚さんにご紹介頂きました。

日本では間もなくメンバーを起用したTVドラマの企画がスタートするなど、
飛ぶ鳥を落とす勢いの人気ロックバンド「SO-LONG」。
そのドラム役であり、作詞・作曲担当のトオルはクサっていた。
商業主義に利用され、カワイイ女の子にギターを持たせただけの「ロック」に半ば絶望し、
遂には曲が書けなくなってしまう。
そんな彼を見兼ねて事務所から出された突然の「充電期間」。
その旅先で立ち寄った北京で、彼は「緑」に出会い、衝撃を受けることになります。

ロックといえばそもそも「自由」や「反体制」をスローガンに掲げているジャンルなので、
この中国の共産党による一党独裁下では、見つかれば当然即刻中止させられ、
下手をすれば連行されかねない音楽です。
そんな中で「緑」とその仲間達は、レストランのオーナーなど理解を示してくれる
協力者の支援を受けながら、同じように不満を持つ人たちの前で定期的にライブを
行っているのでした。

この物語の大きなキーワードとなってくるのが「6.4」
すなわち1989年6月4日に自由を求めて集まった人々に、政府の軍隊が武力鎮圧を行って
数千人とも言われる死者を出した「天安門事件」があります。
よくぞこの時期に…いや、この時期だからこそこの物語を書こう、書きたい!と思ったのかもしれません。
緑に感じた強烈なロックに、その天安門事件でのトラウマにもなりそうな
彼女の体験があることを知ったトオルは、この偶然立ち寄っただけだった中国で、
自分がロック魂を取り戻すためにやるべきこと、そしてそれを教えてくれた緑たちのために
やらなければならないことを悟るのです。

日本で大成功して大金持ちにもなって、でも商業主義の中で
いつしか自分の掲げるロックをすら見失ってしまったトオル。
そして常に政府の影に怯えながらも、1年前の事件に対する深い悲しみと怒りを歌い続ける緑。
トオルが打ち立てた「反政府的」で無謀なる計画に、あの時叩きのめされた緑たちや
彼らの良き理解者であるレストランのオーナー、そしてあまりのじゃじゃ馬っぷりに
トオルが離婚した破天荒女・美菜子もが集まって「その日」のために協力していく様は
実に痛快! なんたって政府が相手。まさにロックなわけです。
そしてその過程の中でお互いに惹かれあうトオルと緑の恋物語や、
一枚岩のハズだった仲間達の間に生じる波乱。
あれやこれやあってなだれ込む「その日」…
これらのお話作りにも目を瞠るものがあり、何気ない会話の一つ一つが
後の展開の巧妙な伏線になっています。
さすが原作付き。トオルや美菜子のおバカな行動の裏でとても良く練られたシナリオだとも感じます。
彼らの反抗はどのような結末を迎えるのか。
そしてトオルはロック魂を取り戻すことができるのか―

img552.jpg
平和ボケした日本人が、リアルに命を賭けた外国の人々に会って衝撃を受ける、という物語。
中でもこの天安門事件は比較的私達日本人にも馴染みが深く、知らない方でも
この本を読んだ後にWikiで十分ですのでざっとこの事件のあらましを追ってみると、
ぐっとこの物語の味わいがより深く感じられると思いますよ。


私は読後に米澤穂信さんの小説「さよなら妖精」を思い出してしまいました。


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