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おひっこし [青春/自分探し]


竹易てあし漫画全集 おひっこし (アフタヌーンKC)

竹易てあし漫画全集 おひっこし (アフタヌーンKC)

  • 作者: 沙村 広明
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2002/06/19
  • メディア: コミック


いや…なんか通りかかったんで手伝える事があったらなと…

時代活劇「無限の住人」で知られる沙村広明さん。
シリアスでバイオレンスな漫画を描いていた沙村さんが、「人の死なない漫画」と自らを茶化す
コメディを描いて話題になったのが、今回ご紹介する「おひっこし」です。
既にこちらでは「おひっこし」の後に描かれたコメディ「ハルシオン・ランチ」という
作品をご紹介していますが、Twitterでこちらの作品が素晴らしいと推す方が
いらしたので読んでみました。
今回はその「おひっこし」に絞ってご紹介してみます。

アフタヌーン・シーズン増刊にて掲載。全1巻。
表題作の「おひっこし」の他に「涙のランチョン日記」と「みどろヶ池に修羅を見た」の
読みきり2編を収録した沙村さんが「竹易てあし」名義で描いた作品集となっています。
…とはいっても、単行本の作者名は思いっきり沙村広明なんですが…気分ですかね、気分(;´▽`A``

この「おひっこし」の話なのですが、内容としては至って普通の大学生の恋愛物語。
主人公はバカで童貞な主人公・遠野禎(とおのさち)。
彼は大学の先輩で、背が高くてサバサバした性格の赤木真由が好き。
しかし赤木先輩には彼氏がいて、今は単身青年海外協力隊の一員として海外にいる。
一方、遠野の幼馴染にして、赤木先輩と以前同居したこともあり、
今は遠野の親友の彼女の小春川玲子は、実は遠野君のことが好き。
…という、仲良し同士のサークル内でフクザツな片思い関係が形成され、
なんだかんだで色々あって恋に破れたり、夢かなったりするお話です。

筋としてはまあ…よくまとまってる印象を受ける無難な恋愛物語なのですが、
特筆すべきはその物語の骨子につく肉付きの部分。
あの沙村さんの繊細でしっかりした構図の絵柄に挿しこまれるセリフの
その独特なノリでしょうか。

ハルシオン・ランチでも同様なのですが、物語内のキャラクター達は
表現に強く作者の沙村さんを意識させる茶化したような言い回しを多様します。
通常、特に恋愛ものであれば、作者は読み手を物語に没入させるために
空気のように気配を消し、主人公達もある意味標準語のような、クセのない言い回しをしつつ
せいぜいフキダシ外にちょろちょろっと手書きでこういったセリフが書かれていることが多いのですが、
それが堂々とフキダシ内に進出してきています。
例えば遠野君が、親友の草介から赤木さんをデートに誘え!とけしかけるシーンでは
「よしっ草介 や やるぜオレはッ 愛があるから大丈夫!!(by 上々颱風)
「そおだッ今日はお前の日だ ゲージ使え!! 2本くらい」 というカンジ。
実際にこういうセリフを言う人もいるかもしれません。しかし、マンガのキャラクターでは
なかなかここまでアクの強いセリフって言わせないんじゃないかなあと。
今読むと微妙に古いカンジを受けますし。
でもこれが「この時代」に生きている大学生の表現としては、リアリティを増している気もします。

img793.jpg

作中では大体恋愛の思いつめた話になりかけると、こういうノリで
面白おかしくどんちゃん騒ぎに切り替え、するりとかわしてしまいます。
しかしずっとこのうやむやのままかと思うと、今度は一転してギャグ無しのシリアスな
本心の気持ちのぶつけ合いになったりする。
シーンの雰囲気をガラリと変える、緩急のつけ方が実に巧いんです。
いつもはシリアスになりそうなシーンでも茶化していたキャラクターであるからこそ、
余裕の笑みを保てなくなって表情に本心が表れる瞬間は、そのあとにどんなにありきたりで
クサいセリフが出てきても、普段の姿とのギャップによって素直にいいなあと思えるのです。
そういうキャラクターの中では、主人公である遠野君はそういった面白みには乏しい
純情青年です。みんなが普段は自分の本心を上手に隠しながら生活している中で、
彼のそういうところがこれまた清清しい一服の清涼剤として機能しています。

雰囲気作りが本当に巧い。
高校生の恋のように血気にはやる部分が少なく、
秘めるからこそ、色に出でた時の彼らの裸の姿がイイ!と思わせるんでしょうね。


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