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はいからさんの世界 [特集もの]

大正浪漫と洒落込みませう

今回はいつものマンガを一冊ご紹介する形式を変えまして、テーマに沿った私のお気に入りのマンガを複数冊ご紹介してみようと思います。
テーマは「はいからさんの世界」

はいからさんといえば大正時代、そして大正浪漫であります。
今年は奇しくも大正100年にあたる年だそうで、ネットで検索してみるとそれを祝すイベントなどもあちこちで開催されているようです。わずか15年ほどの短い、けれど驚くほど激しく人々の文化や生活様式が変化していった時代で、物質的なところでは現代でも作り続けられている有名な「カルピス」や「森永ミルクキャラメル」の発売、宝塚唱歌隊(現・宝塚歌劇団)の結成、ラジオ放送の開始、文化住宅と呼ばれる建築の和洋折衷化…
帝都・東京では和装・洋装の人々が行き交い、人力車も馬車も自動車も路面電車もいっしょくたに走っている新旧が入り乱れた近代との過渡期でもありました。
文化的なところでは明治から続く西洋化を背景に「大正デモクラシー」による平等思想、とりわけ「女は親の決められた男のもとに嫁ぎ、男を立てて家を守るべし」というのが常識であったそれまでの慣習に異を唱え、お見合いではなく恋愛による結婚「自由恋愛」や、男と同じように家を飛び出して働く「職業婦人」になることを求めていった女性が主役の時代でもありました。そしてそういったそれまでの慣習に囚われない、革新的な思考や身なりをした人々を「はいからさん」と呼んでいたのだそうです。
今回はその「はいからさん」的思考を持った女性達の物語を5作ご紹介してまいります。




はいからさんが通る(1) (講談社コミックスデザート (172巻))
まず一作目は大和和紀さんの「はいからさんが通る」
1975年~1977年まで週刊少女フレンドにて連載された少女漫画です。
「はいからさん」と言ったらこの作品のことが第一に浮かぶ方も多いかと思います。アニメ化は言うに及ばず、宝塚歌劇団などによって三度に渡ってTVドラマ化され、人気アイドル南野陽子がヒロインで映画化もされるという大人気マンガでした。
お話は元は武家の家系で陸軍少佐を勤める父親に、男手ひとつで育てられた跳ねっ返りのじゃじゃ馬娘・花村紅緒が、親の決めた許婚者・伊集院忍少尉やお隣で紅緒を慕う幼馴染・蘭丸ら数人の男性たちと紆余曲折を経て最後に運命の人と結ばれる物語です。剣道なら並の男では敵わないくらいの腕前だけど裁縫など家庭的なことは絶望的。紅緒の親友であり憧れでもある学術優秀な美貌の華族令嬢・北小路環と共に自分の夫は自分が気に入った人とする!と決めていた彼女は、祖父の代からの約束で勝手に決められた伊集院との婚約に大反対し、何とか破談にしようと騒動を巻き起こします。しかしなんだかんだでじゃじゃ馬の自分をいつでも笑って包み込んでくれる忍に惹かれて行き、相思相愛となったところへ非情なる運命が二人を引き裂いて…みたいな、いかにも少女漫画の王道を行くお話しなんですね。

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見所は伊集院忍をはじめとした紅緒のお相手候補として表れる個性的な美男子たち。
紅緒は生来気丈で一途な性格ですが、そんな彼女に惚れこむ男どものかっこいいこと!
誰もが女性である紅緒を認め、まだまだ男尊女卑の思想が当たり前のこの時代において決して下に見たりせずむしろ紅緒の意志を尊重して紳士的に接するんです。これがどれだけ特異なことか、度々周囲の人々、とりわけ父や忍が所属する完全男社会の軍部の人々が紅緒と衝突するたび「女だてらに」と煙たがり高圧的な態度を取るのと比べると実に魅力的に感じられるわけですよ。
描かれる街並みは当然のこととして、当時流行した唱歌やファッション、そして時代背景を巧く物語りに取り込んで、コミカルなシーンを織り交ぜつつハラハラドキドキの紅緒の恋をダイナミックに描いていく様は大河ドラマの貫禄!アニメでは矢絣の着物に袴にブーツといういわゆる「はいからさんファッション」で闊歩する女学生時代の紅緒の印象が強いですが、むしろ学生時代の終わりからが本当の始まり。コミカルな部分が多いので男性にもお薦めしやすい大正浪漫好きな方なら必読のマンガです。



椿色バラッド(2) (ブレイドコミックス)
続いてご紹介するのは現在月刊コミックブレイドで連載中の「椿色バラッド」
こちらは幼少時代の体験から「困った人を助けられる人間になりたい!」と強く願うようになった変わり者娘・愛染椿がヒロインの大正浪漫物語。
見た目は愛らしい顔立ちだが女学校への転入早々同組の人に「困ってることない?」と善意の押し売りのようなことをし、即ハブにされる彼女。周囲に変わり者と忌避されても、困りごとを抱える人はいないかと椿は奇矯な行動を度々起こし、遂にはとあることから出逢った高見巡査に憧れて警官になると言い出します。しかしそこは軍隊と同じく完全な男社会。度々まといつく椿にここでも高見の部下・猿渡が「女のなれる職ではない!」と強硬に反発し、その他も誰も本気には受け取ってはいない様子。一方で椿も男子に及ばない身体的な能力や、「困った人を助ける職業」と思っていた警察官が必ずしも人に歓迎されるわけではない現実を見て大いに迷うことになったりするのです。

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矢絣の着物に袴にブーツのはいからさんスタイルに加えて頭に警察官の制帽という見た目にも物珍しい椿。一時は職業婦人にもなりましたが結果的に恋に生きた「はいからさんが通る」の紅緒とは対照的に、徒手空拳で男社会に…しかも完全男社会の国家機関にどのように食い込んでいくのか…大いに波乱万丈が期待できるイチオシのマンガです。



大正野球娘。 (1) (リュウコミックス)
3作目はライトノベル原作で、「楽勝!ハイパードール」や「子はカスガイの甘納豆」などを描いたミリオタ漫画家・伊藤伸平さんによってコミカライズされた「大正野球娘。」全5巻(+外伝1巻)です。
この作品は女学校に通う9人の女子が男子学生たちに対抗して野球チームを結成するという物語で、2009年にアニメ化もされました。
時代は大正末期。見た目の特徴としてメインヒロインの小梅らがセーラー服を着ています。歴史的には大正12年の関東大震災以降にセーラー服が現われるようになり、和装着物、着物+袴、そしてセーラー服姿と同じ制服で統一される現代の学園ものとは異なるこの時代ならではの文化が9人の女学生の特徴づけに一役買っているのが巧いなあと。
そして野球をすることになったきっかけというのが「許婚者が平気で男尊女卑の物言いをしたのが気に食わなかった」良家のお嬢様の呼びかけで始まったというのがもう…いかにもハイカラさんらしいじゃありませんかw

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そもそも女学校は現在の勉学に当たる授業よりも、夫を立てて良き妻・良き母となるための家庭的な技能や修養を目的とするところが多く、この大正末期においてもまだまだ野球などという男のするスポーツをやりたいと言い出したり、更には男に勝とうと思うこと自体女性らしくなることを求めてわざわざ進学させた親の眉を大いにひそめる考えなわけです。作中ではそんな親たちの理解と助力を仰ぐために様々な段取りを考えて実行していく彼女たちの姿が描かれます。そして野球を通じて度々他校の男子達と接触することも多く、「お嬢様のお戯れ」程度に思ってナメていた男達の中に、彼女達を好敵手と認め虚虚実実の情報戦を繰り広げるところも非常に面白いですよ。もちろん好敵手として張り合いながらも惹かれあっちゃったりする年頃の男女の初々しいシーンも織り込まれていてその辺も見所でございます。



幾百星霜(2) (F×COMICS)
4作目は時代は明治の頃になるのですが、この時代の恋愛観を描いたお話として強くプッシュしたいのが雁須磨子さんの「幾百星霜」
主人公は のっぽだけどおっとりして心優しいお嬢様・杉内敦子と、おちびで美少女だけど口が悪くて行動的な仔犬系女子・滝千賀子。
ある日幼少の頃より敦子の許婚として決められていた火野家から、身長が高いことを理由に一方的に破談にされたことを知った千賀子が大いに怒り、一目敦子を袖にした火野家の嫡男・保太郎の顔を観てやろうと敦子を連れて火野家に乗り込んで巻き起こる恋愛物語。

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見所は武家である火野家に君臨する強烈な保守派のキャラクターの存在。
嫡男の結婚相手は互いの性格や相性よりも、身分とかみてくれとか財産とかがこちらと相応しいか否かで決められる世界。そこに敢然と「自由恋愛」を掲げ(他人のことだけれど)乗り込んでいく千賀子と、彼女に引っ張りまわされながらも自分を袖にした保太郎の事情を好意的に受け止め、尚仄かな好意を寄せる敦子のふんわりしたキャラクター。これがなんたってイイんですよね。
ハイカラさんな新し物好き・敦子の母親や男顔負けの怜悧な美人・保太郎の姉など、火野家を舞台に両家の人々が二人をバックアップして大騒動に発展していく物語。そして肝心の保太郎の真意は…?
刊行ペースが遅いのが残念なのですが、既刊の二巻まででお話が一段落しますので、是非ご覧になっていただきたい恋愛ものですよ。



大正ガールズ エクスプレス(1) (講談社コミックスキス)
ラストの5作目は実に色々な部分がこれまでの大正浪漫物語とは異色の「大正ガールズエクスプレス」です。
ハイカラ娘が必ずといっていいほど通う女学校。
そこは財政的に裕福な家庭の子女が通う花嫁修業学校で、大多数の庶民の女性は基本「尋常小学校」という6年制の義務教育を受けた後は、親の捜した結婚相手の元へ嫁いで行くものでした。小学校卒業後更に学費を払ってまで娘を進学させる家は圧倒的に少数だったんですね。裕福で身分が高くても、お相手が決まればすぐにも学校を中退して夫の家に入り、妻となって後は夫の仕事に一切口出しせず三歩下がってお姑さんやその家の使用人たちとうまくやりながら家を守っていくのが求められていましたから、世界情勢だの算学だのを学んだところで無駄と考える親は多いわけです。
女学校に通う女子にとっては自分のお相手が決まるまでの数年、趣味を全開にできる限られた時間。そこではやれあそこのカフェーのなになにが美味しいだとか、やれ劇団のスタアの誰誰様に憧れるだとか、この頃に多く創刊された少女雑誌のドラマチックな大恋愛小説や、人気作家・吉屋信子の少女同士のSな関係(小説「マリア様がみてる」の擬似姉妹のような関係)を描く「花物語」などの叙情的な作品に興味津々なわけです。

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そんな中、祖母が学長を勤める女学校に通うお嬢様・千代は、女性でありながら親の決めた許婚に嫁ぐことを良しとせず、将来は職業婦人として独立したいという意志の持ち主でした。そのために日々隠れて新聞に目を通しては世界の情勢を知ろうとしたり、校内の女学生達の目を社会に向けさせようと学校の屋根裏に潜んでいた赤貧少女・よし子を巻き込んでとある計画を実行に移していきます。
特に珍しいなあと思ったのはその相棒のよし子の存在ですね。女学校の中の世界って誰もが良家の子女で、一般庶民、ましてや尋常小学校すらまともに通わせてもらえない貧乏少女が混じる物語なんて観たことないわけですよ。文字通り住む世界が違いすぎる二人がまともな意思疎通を図ることは難しく、その勘違い、すれ違いっぷりが実に面白い。そして他の女学生のふわっふわした少女趣味とも興味が違いすぎる千代は、まるでギャルの只中にあって一所懸命話を合わせようとするおぢさんのような状態。このディスコミュニケーションっぷりが、今のところ女学校の中だけが舞台のこの物語を飽きさせないんですね。閉じた世界の中であっても大正浪漫なはいからさんを存分に楽しめる作品だと思いますよ。


以上「はいからさん」をテーマに5作のマンガをご紹介しました。
まだまだ私が知らないはいからさんマンガは存在しているとは思いますが、知る限りの中で好きな作品をご紹介させていただきました。
「大正浪漫」と言ったら「はいからさん」「猟奇・探偵もの」そして「和洋折衷の街並み」
これらが実に私を魅了してやみません。
折角の大正100年の記念の年、おあつらえむきに読書の秋でもありますのでこの機会にはいからさんの世界を堪能してみてはいかがでしょうか。


【関連動画】
BSマンガ夜話~はいからさんが通る1/4


アニメ~はいからさんが通るOP


アニメ~大正野球娘OP



【その他参考文献】

大正ロマン手帖---ノスタルジック&モダンの世界 (らんぷの本)

大正ロマン手帖---ノスタルジック&モダンの世界 (らんぷの本)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2009/12/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


女学生手帖―大正・昭和乙女らいふ (らんぷの本)

女学生手帖―大正・昭和乙女らいふ (らんぷの本)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2005/04
  • メディア: 単行本



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