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おもいでエマノン [SF]


おもいでエマノン (リュウコミックススペシャル)

おもいでエマノン (リュウコミックススペシャル)

  • 作者: 鶴田 謙二
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2008/05/20
  • メディア: コミック


私の話を聞いてみない 信じるか信じないかは別として…

1967年―
当時SFと失恋に明け暮れていた学生時代。
僕は何度目かの失恋の傷を癒し、財布も底をついて帰路の最中だった。
九州までの17時間 乗り込んだカーフェリーの大部屋で、
僕の苦手な束の間の共同体の一員になった僕は、
そこでエマノンと名乗るフーテン娘に出会った。
粗編みのセーターにジーンズ。異国風の彫りの深い顔立ち。
胸までの長い髪におおきな瞳と わずかなそばかす。
そしてナップザックを肩にかけ、両切タバコをくゆらせている彼女は、
あどけないようでいて、時折深い哲学めいた光をその瞳に宿していた―

COMICリュウにて連載 全一巻
「Spirit of Wonder」や「アベノ橋魔法☆商店街」
そして様々な小説の挿絵などで、遅筆ながら根強い人気を誇る鶴田謙二さんによる
梶尾真治氏の原作小説をコミカライズした作品となります。
元々原作小説の挿絵も鶴田さんが担当しており、コミカライズ化にあたっては
原作のイメージを最も伝えられる贅沢な漫画だなと思います。
Twitterにておススメされたので再読してみました。
以前拝見した際は、原作を知らないこともあって
なんだか難しい漫画だなあという印象だったんですね。

これは主人公の青年がフェリーの中で出会った女性と過ごした一晩の物語。
偶然近くに乗り合わせて意気投合した二人。
そこで青年は、エマノンと名乗った、まだ未成年のようなそばかす少女の、
奇妙な身の上話を聞くことになります。
彼女の語った身の上話―
それは彼女が地球上に生命が誕生してから今日までの約30億年ほどの時を、
それまでの記憶を一切忘れることなく連綿と受け継いで生きてきた、というものでした。
目を丸くする青年。
あまりにも突拍子のない話に、しかし彼女が語る記憶のリアルな語り口、そして何より
見た目は少女のような姿だが、年不相応などこか超然とした雰囲気を備えているエマノンに、
青年は笑い飛ばすどころか次第に惹きこまれて行くのです。

彼女は青年に投げかけます。
なぜ記憶が消えることなく存在し続ける人間が存在しているのか?
エマノンは30億年の記憶を持ち続ける自分に疲れてしまっているのです…

夜のカーフェリー
外には煌々と照らす月と、波と夜空のみ。
そして人気の無い食堂で、エマノンは記憶を手繰り寄せるように
髪を時折かきあげながらぽつりぽつりと話していきます。
この静寂のシチュエーションが、エマノンの幻想的ともいえる話に
奇妙なリアリティを付加しているんですよ。上手いなあと思います。

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その後恋仲になった二人。
しかし青年が翌朝目を覚ましたときには、エマノンは書置きを残して姿を消していました。
後に青年は、意外な形でエマノンに再開することになるのですが、
彼女が再開の時に語った「あの時いなくなった理由」は、
眩暈がするような永劫を生きる彼女の行き着いた、結晶のように純化され、メタ化された言葉でした。

青年との恋の記憶… それは彼女にとっては膨大な「おもいで」の一つにすぎません。
自分にとってのエマノンと、エマノンにとっての自分との記憶の占有率を考えると、
何とも切ない気分にさせられます。
だからこそなのでしょうか、彼女が青年の前から姿を消したのは…

自分の存在理由も判らず、永遠をひたすらさすらい続けるエマノン。
彼女の旅に終着点はあるのでしょうか…

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