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デラシネマ [燃え]


デラシネマ(1) (モーニング KC)

デラシネマ(1) (モーニング KC)

  • 作者: 星野 泰視
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/04/22
  • メディア: コミック


作りもんじゃない―観てる人がまるで本物と見紛うような
惰性や過去の焼き直しじゃなく 伝統や慣習に縛られた「活動写真」じゃない―
本物の「映画」をつくりたいんだ!!(です!!)


昭和28年―
戦後の混乱期をようやく抜け出した日本。
この時代において国内で年間のべ十億人を動員した娯楽があった‥
それは野球でもプロレスでもなく「映画」。
今回ご紹介するのは国内の映画黄金期の京都太秦(うずまさ)を舞台に、その中で成り上がって行こうと誓い合った若き二人の青年の物語をご紹介します。
これがねえ‥アツいんですよ!
戦後の焼け野原から立ち上がり、これから高度成長期に向かおうとするその前夜の、日本人のうねるようなパワー。それが間違いなくこの映画を観る側にも、そして創る側にもあったのです。
主役の二人だけじゃない、むしろ二人にとって時に先生となり、時に立ちはだかる壁となり、時に互いに刺激を与え合う関係でもある脇役たちの存在。例外なく映画を好きだ、むしろ良い映画を撮るためなら命懸け!更には映画をこじらせて人格歪んじゃってる!というやつらがごろごろ出てきちゃう物語なのでございますよ。

モーニングにて連載。現在5巻まで出ていて、今月22日に6巻が発売される予定。
映画‥特に邦画は最近全く観てないですね~ レンタルを含めて。
でも昭和の時代はそれなりに隆盛を誇っていたと思います。映画のスターなんて言葉も、ハリウッドでならいざ知らず日本では昭和の響きがありますよね。その国内での映画産業が最盛期を迎えたのが戦後間もなくの今回ご紹介するデラシネマの時代。黒澤明や小津安二郎なんていう名監督らが次々と映画を公開し、1958年には東宝、東映、松竹、日活という主だった映画会社だけで年間503本、劇場動員数は実に11億2745万人にも上ったのだそうです。*
そんな時代の京都太秦と言えば、主に時代劇映画の一大産地として非常に活気のある場所だったようです。

主人公はそんな太秦撮影所に入社したばかりの宮藤武晴(くどうたけはる)と風間俊一郎(かざましゅんいちろう)の二人の若人。宮藤はガタイがよく見た目通りのさっぱりした性格で、今は時代劇で主人公の剣士を囲む一団の中でもセリフも無ければ斬られ役でもない「その他大勢」の大部屋俳優。一方の俊一郎は物腰柔らかで細やかな気配りが出来る監督志望の青年で、今は助監督のそのまた下っ端の更に下で一日中雑用で駆けずり回るような役のフォース助監督。‥今で言えばADというやつでしょうか。
それぞれまだまだ駆け出しのペーペーではありますが、戦後満州から引き揚げてきた二人は、撮影所にほど近い家に下宿しながらなにやら強い目的をもって映画界のトップを目指そうと固く誓い合った仲。物語は俳優と助監督というそれぞれ異なる方向から成り上がろうとする二人を主人公に、この時代の映画に携わる様々な人を描き出していきます。

まずこの物語、どこが良かったかと言えば映画に携わる撮影所で働く人々の熱気。
冒頭主人公の二人が朝食を済ませて下宿を出ると、同じくあちこちの家々から仕事に出るらしい道行く人々が、よく見ると互いに朝の挨拶を呼び交わしながら皆二人と同じ方向に歩いて行くシーンがあるんですね。
あれ?と思っているとあっちからも、こっちからも老いも若きも男ばかりどんどん加わってくる。
そしてその先には太秦撮影所!
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町一個の男たちが皆そこに注ぎこむのかと思われるくらいの巨大会社。そしてこれだけの人々が皆映画を創る「仲間」であるという連帯感。‥かぁ!昭和だなあ!もうこのシーンだけでご飯3杯はいけますよ。
社内はスターや名監督を頂点とした完全なピラミッド社会。スターには取り巻きがついてそれこそ肩で風切って歩く一団になるし、座りたいと思えば椅子が出てくる、葉巻が差し出される身の回りのことを全てやってくれる。逆に頂点に君臨する人たちもただ偉ぶってるわけではなく、新たな映画の撮影が始まるとなれば関係各所に酒を振る舞うし、子分たちの飲み代をまるまる払ってやる気風の良さを見せる。一つの映画に関わる膨大な人間がまるで家族のような関係を築く世界。これがなんというか‥いいんですよね。
けれども「家族のような付き合い」というのが必ずしも良いことばかりを生むことはないわけで‥
それは反面絶対な上下関係であって、それに合わせられない者は「家族を裏切る者」として徹底的に排除される陰湿な面も持っている‥。若くして成り上がろうという野望を持つ二人は、それゆえにこの闇の部分に度々遭遇することになり、時に手痛いメに遭ったり絶体絶命の状況に立たされたりするわけです。

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デラシネマを面白くさせている重要な要素の一つに、強烈な脇役たちの存在があります。
職人気質で血の気が多く、彼らの作ったものにケチをつけようものならタダでは済まない大道具の面々を束ねる鬼の棟梁。
撮れば必ず大ヒットする国民的時代劇シリーズの主役で、誰もが逆らうことなど出来ない押しも押されぬ大スター。
様々な内外のプレッシャーを受けながらも、それでも堅い信念を持って自分の良いと思った映画を撮り続けることに邁進する監督たち‥
現在の太秦の映画を引っ張っていく存在である彼らは、「新しい」「リアルな」映画を創りたいと望んで入った武晴と俊一郎にとって時に旧態依然とした乗り越えるべき強力な壁として立ちはだかります。しかし彼らを単純な「倒すべき敵」として描くのではなくて、二人が関わることでその監督やスターたちがどういう経験をし、その考えに至ったかというドラマがきちんと深掘りされていてうならされるんですよね。
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つまるところ立ちはだかる壁となった原動力は武晴と俊一郎と同じ「映画に対する情熱」。
それが傍から見れば極端でいびつな形に見えてしまったり、破天荒に見えたり、頭の堅いヤツに見えたりするわけですが、でも向いてる方向は皆同じ。むしろ映画に対する情熱では武晴と俊一郎を圧倒するほどのことを平気でしている人たちだったりするから出る人出る人みなクセがあって面白い。

そして最後に触れねばならないのはやはり主人公の二人!
何があったかはまだ5巻までの内容で語られてはいませんが、満州で何事かあってスターと監督というそれぞれの目的をもって頂点を目指す二人。
武晴は直情的な人間で、自分が良いと思ったことは遠慮無くズケズケいう。それが為に周囲や特にトップスターである御大に目をつけられたり周囲に摩擦を生むことが多いのだけれど、自分を試そうとするかのように次々と難しい役を買って出て、結果周囲を圧倒する魅せる殺陣をやり遂げて認めさせてしまう勝負強さがあるし、俊一郎は下っ端監督としてお茶くみから道具の手配から自分の上の助監督の指図されるがままに一日中スタジオ内を駆けずり回る日々を送るのだけれど、時に愚図る俳優にとっさの機転で役に入り込ませるきっかけをつくって見せたり、基本気の利く下っ端クンなのだけれど決して卑屈ではないし、ここぞという時には絶対引かない頑固さも持っている。もう出来過ぎなくらいにかっこいいんですよ。
そしてクセはあるけど間違いなく凄い才能を持つスターや監督から二人それぞれの方法は異なるけれど、結果的には学んで吸収していってる感じや、周囲に認められていく過程がしっかり描かれている。週刊ペースで描かれているのに薄いっていう感じがぜんぜんしないんですよねえ。

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デラシネマは意外と本屋で既刊が揃っているところをあまり見かけません。
私がこの作品に興味を持ったのが今年はじめくらいなのですが、思い出した時に本屋で探しても見当たりませんでした。その状況はおそらく今も続いている印象があります。
6巻発売のタイミングで多少既刊も復活する可能性はありますが、もし興味を持っていただけましたら冷めないうちにネットとかで手に入れる道も含めて探してみるといいかもですよん。


モーニング公式サイト→『デラシネマ』作品情報
*マイナビの記事から引用させて頂きました
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