So-net無料ブログ作成
検索選択

COCOON [青春/自分探し]


COCOON

COCOON

  • 作者: 今日マチ子
  • 出版社/メーカー: 秋田書店
  • 発売日: 2010/08/05
  • メディア: コミック


想像してみて― 自分たちは雪空のような繭に守られていると

抜けるような青い空 ここは南国 太陽の島―
「ねえ サン 雪ってみたことある? …あるわけないか。
 この島はずーっとあたたかくてまるで天国みたいだもんね」
東京から帰ってきたという編入生のマユは、そう言って笑う。

戦況が慌ただしくなり、私たち女学校のみんなは看護隊として
傷ついた兵隊さんたちのお世話をすることになりました。
私たちもお国のため、天皇陛下のために戦える―
そうは言ってみたものの、知らない男の人はやっぱりこわい…
マユはそんな私に優しく微笑んで、おまじないをかけてくれました。
「わたしたちは想像の繭に守られている 誰もこの繭を壊すことはできない―」
自ら糸を吐き身を守る蚕のように、
わたしたちは楽しい空想でできた繭をつくり、その中にこもるのだ。
次々と運びこまれては死んでいく兵隊さんたちのことも、
道端のそこここに見知らぬ誰かの千切れた身体が転がっていても、
わたしたちは繭の中で幸せな夢を見る。
いつか目覚めた時にはすべてが終わっていますように。
それが生糸を取るために、生きたまま煮られる蚕であっても…
だけど ほんとうは―
だれも死にたくなんてなかった

エレガンスイブにて連載。全1巻。
「センネン画報」「みか子さん」など、叙情的な作風で知られる今日マチ子さん。
『現代の少女が、昔の戦争の本を読んで、夢を見る。そういうお話を描こうと思いました。』
とあとがきで書いているこの作品は、第二次大戦中の沖縄のひめゆり部隊がモチーフです。
それまで私が抱いていた今日マチ子さんの印象としては、
なにげない日常の中にある一瞬を切り取るスナップ写真のように、
観ているこちらの想像力をかきたてる絵を描かれる作家さんというものでした。
だからこそ言葉で紹介しづらくこちらでご紹介することを敬遠していたのですが、
今回は戦争マンガであって、しかしそこにどこか浮世離れした乙女の香りのする
新感覚な物語だったのでご紹介してみようと思いました。

戦争マンガといえば、例えば中沢啓治さんの「はだしのゲン」であるとか、
こうの史代さんの「この世界の片隅に」など、敗戦の途を辿り、
凄惨さを増していく日常を受け止め、それでも明るく逞しく生きようとがんばる物語が多いのですが、
この作品はそういった意味では逆に、辛い、自分ではどうしようもできない現実から目を逸らし、
どこか乙女ちっくな少女性を纏うことで、目の前の凄惨な日常をやり過ごそうとする
少女達の姿が描かれます。
それは石鹸の匂いのついた掌で口元をおおい、一目散に死体の転がる道を
走り抜けることだったり、栄養失調で目が見えなくなっても、最期まで手帳に
大きなおにぎりや綺麗な服を着た友人の絵を描き付けることだったり、
次々と担ぎこまれる重傷の兵士達を尻目に、コンパクトで自分のヘアスタイルを直す姿だったり…

img725.jpg

しかし繭に篭った蚕が、生きながらにして煮られてしまうのと同じように、
自らの繭に閉じこもった少女達は、次々と凄惨な死を迎えていきます。
その突然の死が、あるいは か細く痩せ細って、ろうそくの灯火が消えるような死が、
煮られた熱さに耐えかねて、自ら飛び出し熱湯の中に沈んでいく蚕のような死が、
今日マチ子さんの決して写実的ではない絵であるにもかかわらず、
いや、彼女の描く愛らしい少女たちであったからこそ、その死の光景が
ぐっとこちらの目を惹きつけて離さないのです。

この物語はおそらく一度読んだだけでは内容が理解できないかと思われます。
まず一読してください。そしてあとがきを読んで、もう一回読んでみてください。
「ああ、そういうことか」
と解ると同時に、びりびりっと身体がシビれるような感覚、
このマンガの凄みを味わうことができるんじゃないかなと思います。


今日マチ子さんのHP → 今日マチ子のセンネン画報

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:コミック

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この記事のトラックバックURL:
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
ブログパーツ